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第四章 天女、翻弄 + 6 +

last update آخر تحديث: 2025-06-04 20:34:45

 蝶子の姿はすでに建物の中にない。しゃらしゃらという簪の鳴り響く音だけが、彼女がさっきまで渡っていたという証になる。

 桜桃と桂也乃は門の方まで行ったのだろう、この回廊にいるのは小環と四季、そして四季と同じくカイムの民だという梧慈雨(あおぎり じう)と寒河江雁(さがえ かり)の四人だけになっている。

 四季の言葉に驚いたのか、慈雨と雁もまた興味深そうに小環を見つめている。篁という名はかつてこの地にいたある女性が即位前の神皇帝と恋に落ち、帝都で生きることを選んだときに与えられた特別な苗字。カイムの民にとってみれば伝説の姓ともいわれている。神は異なれど始祖神と契約したことで神と同等とされる皇一族に認められた存在、篁一族。だが、彼女たちカイムの民は知らない。その姓を与えられた女性は神皇帝との間に子をなすが、その子である湾はすでに篁を名乗っていないということを……

 四季たちは小環のことを神皇帝の妾腹の娘だと思っているようだ。誰もここにいるのがほんものの第二皇子であることに気づくことなく、篁小環という少女の血の中にわずかに存在する神聖なものに惹かれている。

「……神の声なんか、聞いたことないよ」

 ふっ、と小環は自嘲する。たしかに自分には始祖神の血が混じっている。だが、常人とはことなる不思議なちからを持っているといわれ崇められても実感が湧かない。ひとに簡単な暗示をかけたり負の思念を和らげることくらいしかできないのだ。その程度なら神の血縁者じゃなくても、神職にいる人間で事足りるはずだ。

「小環さん。あなたが強い神に祝福された存在であることは否めないと思うわ」

 そんな小環に、慈雨は強く訴える。傍にいた雁もそのとおりだと深く頷く。

「カイムの民の多くはその土地における神から加護を受けているけれど、そのちからは微弱でいまでは殆ど常人(つねびと)と変わらないわ。だというのにあなたがこの学校に来てからこのわたしでも違和感を覚えるのよ。四季さんみたいに肌で感じるようなことはできないけど、それでも……」

 雁が口にしているのは独り言のようにも思えたが、小環は黙って耳を傾ける。

「神と同等であるという『天』の部族カシケキク

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